社会福祉法人幸会
ヘルパーステーション幸園 様
Introduction Data
導入年月 | 2021年3月 |
利用ユーザ数 | 73名 |
導入形態 | クラウド |
導入目的 | 在宅要介護者(利用者)の健康状態の適時適切な把握 本部管理・事務部門のデータ入力、集計・分析等の負担軽減 ヘルパーとケアマネジャーのコミュニケーションの円滑化 |
Point
従来の“紙による管理”で生じる労力的負担を削減
コミュニケーションの充実がサービス品質の向上につながる
導入により生まれた時間の有効活用が課題
地域に根ざした訪問介護を推進
社会福祉法人幸会(さいわいかい)は1997年12月10日、神奈川県相模原市に設立され、現在、「幸園」のブランドで特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、ショートステイ施設、デイサービスセンター、ヘルパーステーション、居宅介護支援センター、グループホームをはじめ、相模原市からの委託事業である地域包括支援センターなど、介護に関わる各種事業を展開しています。また「さいわい保育園」という保育園も運営しています。神奈川県西部の相模原市において、地域に根ざして介護関連サービスを総合的に行っております。
そのなかで、介護現場の業務効率化やサービスの質の向上を目的としたシステム『Medicare』を導入したのは、「ヘルパーステーション幸園」という訪問介護事業を行う事業所です。ヘルパーステーション幸園では、相模原市の高齢者が住み慣れた地域や自宅で安心した生活が送れるよう、ホームヘルパーを派遣。掃除や洗濯、調理など日常生活の援助のほか、入浴や排泄、食事の介助などを行っています。加えて、福祉有償運送も実施しています。福祉有償運送とは、公共交通機関を使用して移動することが困難な在宅要介護者を対象に、有償で通院などを行う送迎サービスです。
現在、ヘルパーステーション幸園には10名のヘルパーが所属し、70名を超える利用者がいます。ヘルパーと事業所にいるサービス提供責任者などは、月に1度は全体で集まり、ミーティングを実施。そのミーティングでは、感染症や緊急時の対応、ひやり・ハットの事例検討などの研修会も開いています。
最近では、新型コロナ感染症の影響拡大への対応のため、防護服を模擬的に着用して利用者の自宅に実際に訪問し、さまざまな介助活動を適切かつ十分に行えるかなど、実地の確認研修を実施しています。
『Medicare』導入前は人員増による利用者対応の充実も想定
ヘルパーステーション幸園に所属する10名のヘルパーは、『Medicare』の導入以前から、フルタイムで働くヘルパーもいれば、パートタイムで働くヘルパーもおり、また利用者の自宅へ直行直帰するケースもあり、それぞれのヘルパーの活動予定をスケジューリングして対応していました。
ケアマネジャーは5名。事務所ではサービス提供責任者を中心にヘルパーの日々の訪問介護活動の情報を収集しますが、ケアマネジャーは毎月、その情報を確認・分析し、翌月のケアメニューなどを組み立て、利用者である要介護者とその家族(契約者)に提示し、より安心した生活が送れるようアドバイスなどの対応を行っています。なお、ケアマネジャーはヘルパーと同一事務所内にいるのではなく、別事務所にいます。
『Medicare』の導入に関しては当初から、「導入すれば最も効果を発揮するヘルパーステーション幸園で」と決めていました。また、導入にあたっては、ヘルパーをはじめヘルパーステーション全体の人員増も視野に入れていました。
『Medicare』を導入して業務効率が高まれば、より多くの在宅要介護者に利用する機会を提供できます。そのニーズに人員増で対応すれば、ヘルパーステーション幸園全体の効率化と事業規模の拡充につながるという考え方です。
ところが、2022年8月時点では人員増は実現できていません。ヘルパー人材の需給を考えると、有資格者だけができる仕事のため、募集をしても簡単には集まらず、現在、他所で働いているヘルパーは単純には転職しづらい面もあります。端的にいうと人材難の状況にあり、簡単には人を増やせない状況が続いています。
そのため「現在は新規に利用したいと要望する要介護者とその家族がいても、お断りせざるを得ない状態」とのことです。
導入前は訪問介護報告伝票の手書き作業・入力作業が大きな負担に
『Medicare』の導入以前の通常のヘルパーの活動は、利用者の在宅する自宅などにヘルパーが伺い、契約したサービスメニューに沿って掃除や洗濯、調理など日常生活の援助のほか、入浴や排泄、食事の介助、また通院などの外出介助などを行います。それらの訪問介護活動を終えると、50枚綴りの複写式活動報告伝票に、活動内容を終えたことと体温や血圧などの健康状況や気になったこと、留意すべき事項など必要事項を記入し、複写分を利用者(もしくはその家族)に手渡し、1枚を事務所に提出します。
ヘルパーにとっては、この手書き作業が労力的に負担で、伝票を紛失・汚損するリスクもありました。
また、事務所では事務スタッフが毎月10日、20日、月末と概ね10日おきに、活動報告伝票に書かれた情報をパソコンに入力します。なお、体調不良など急を要するような伝達事項がある場合、ヘルパーは活動報告伝票の記入や提出を待たずに、事務所にいるサービス提供責任者やケアマネジャーなどに電話連絡を入れるケースもあります。
通常のデータ入力は概ね10日に1度ですから、顕著な体調不良などが見られない場合、ヘルパーもメニューに沿ったサービスを実施するだけで、事務所側でも利用者の体調変化などに気づかない可能性もあります。この対応で問題になったことはありませんが、このままでも構わないとは言えません。では、毎日、事務スタッフがパソコンにデータ入力してサービス提供責任者がチェックすればよいともいえますが、その要員を確保するのは現実的ではありませんでした。
データ入力作業が事務所側では大きな負担であり、いわゆる入力転記ミスや情報の見逃しリスクもあったのです。
なお、『Medicare』導入前はヘルパーの連絡業務が錯綜するという課題もありました。利用者1人の全サービスメニューを1人のヘルパーが担うわけではなく、複数の利用者の入浴介助を担うヘルパーもいれば、複数の利用者の食事の介助を担うヘルパーもいます。すると、複数のヘルパーが1人の利用者に対応するケースもあるのが現実です。
1日のうちに数人のヘルパーが同じ利用者宅に伺うとなると、当然ながら利用者側も困惑します。一方、ヘルパーのスケジュールを紙や事務所のホワイトボード、電話やメールなどで調整・管理すると、どうしても連絡業務が錯綜します。結局、1人の利用者に対する複数のヘルパーの活動報告を集約し、その情報をケアマネジャーに報告する必要があるため、月末に行う当月の訪問活動報告業務で混乱も生じます。スケジュール調整の連絡、スケジュール管理、訪問活動報告の取りまとめがスムーズにできているとは言えなかったのです。
「手書き作業」を削減し、臨機応変な訪問介護活動の実現を模索
ところが、『Medicare』のように、“つどつど”でスケジュールや記録の登録や確認できると、
「その日、誰が、どんなサービスを行っているか」が分かるため、連絡事項の錯綜もかなり防げます。他のヘルパーの記録・活動状況が活動時間内でも瞬時にわかるようになると、ヘルパーもサービス提供責任者も利用者やサービス内容の実施経過を追跡しやすくなります。これまでは事務所で、もしくは利用者宅に置いてある報告書伝票を確認しないと分からなかったのと比べると、雲泥の差です。
事務スタッフにとって、『Medicare』導入前の仕事の大変さは、なんといっても伝票記録のデータ入力作業でした。導入前は概ね1000項目ほど打ち込み転記していた作業が『Medicare』の導入によってなくなるので、仕事は格段に捗ります。
また、サービス提供責任者はヘルパーにサービス内容の個別具体的な指示を出すのに、紙の連絡ノートを使っていました。手書きのため煩雑になってしまうケースもあり、誤記や誤読がまったくないとは言えません。
ところが『Medicare』を導入すれば、指示が瞬時に共有され、読み間違い・書き間違いも格段に減り、ヘルパーは直行直帰の場合でも逐一、確認できます。ヘルパーのスケジュール管理にしても、月末に急用が入り予定を変更せざるを得なくなると、『Medicare』導入前は予定の立て直しが大変でしたが、導入すればスムーズに対応できます。
ヘルパーステーション幸園のヘルパーに『Medicare』を導入
実際にどのシステムを導入するか。『Medicare』導入前は他の事業所に情報の電子化状況を問い合わせてみたり、他のシステムのデモ版を使ってみたりと試行錯誤しました。そのなかで『Medicare』に決めたのは、従来の取引会社の紹介があったことと、実際に使ってみて使いやすいと感じたからでした。「効率化が進めばいいね。負担が減るといいね。」など、期待を持って導入を決めました。
トータルでコストパフォーマンスに優れていたことも導入の決め手になりました。また、相模原市も担当課では広く介護事業者に介護情報等の電子化を推奨していました。そうした機運も導入の後押しになりました。
幸会の経営側も、情報の電子化と効率的な運営などの必要性には十分に理解を示していました。ただ、一般論として電子化に慣れていない場合、導入当初は慣れるのに手間取り、かえって労力的に負担になるケースがあります。その点を考慮して、導入を決めた2021年3月から運用開始の6月までの間、ヘルパーに『Medicare』の利用法の研修も行いました。
現在、『Medicare』の活用は導入して日も浅いため、基本的な機能を使っています。ヘルパーのシフト管理は随時調整でき、別の緊急の用事が入ったときに代行可能なヘルパーをすぐに呼び出せるのも役立っています。
サービス提供責任者からの指示も打ち込むと瞬時にヘルパーのスマートフォンで共有できるので、時間・労力のムダを大幅に省くことができます。記録資料を紛失したりするリスクもなくなりました。
また、ヘルパーが利用者宅を訪問し、サービスを始めたときと終了したときに、コードを読み取ることで、サービスの提供状況をタイムリーにサービス提供責任者と共有できます。加えてサービス提供責任者は、サービスの提供状況をスケジュールの照会から「提供前」「提供中」「提供終了」の状態をスケジュール表の背景色により確認できます。これはサービス提供責任者側にとって安心感につながります。なお、利用者アカウントを持つ利用者家族もスマートフォンでサービスの提供状況を確認できます。
なお、その日の活動記録は、複写式の伝票の作成と打って変わってスマートフォンからの入力で済みます。文章で入力することは最小限にとどめ、サービスの提供項目についてチェックして登録するだけなので、ヘルパーの省力化や時間の節約に貢献します。入力情報は同時にサービス提供責任者にも共有されるので、伝票回収の手間も省くことができ、10日に1度のデータ入力、最終的な月末のデータ入力もなく、当日中に活動実績が確認できるので便利です。
利用者、利用者家族にとっては、これまでの複写の活動報告伝票がスマートフォンに表示される『Medicare』画面上の確認に代わるのですから、違和感がある人もいると想定されます。その対処のため、登録した報告内容を必要に応じてプリントし、定例的なお便りと一緒に届けるようにしています。
なお、電子化による利用者家族への報告は、利用者家族が利用者と離れたところに住んでいる場合も有用です。これまで利用者とその家族が別の場所に住んでいれば、報告や連絡は郵送やファクシミリで行うこともありましたが、その時間や労力が減ったので格段に便利になりました。
『Medicare』により、ヘルパー・ケアマネジャーの連携の充実を推進
ケアマネジャーにとっては、たとえば利用者に急変があった場合、従来は紙の報告書の束をめくり返して確認していたのが、迅速にデータを振り返って対応できるので、翌月、翌々月のケアプランも立てやすくなったようです。
また、今後は各ヘルパーのスケジュール情報を業務報告書に反映できないかと考えているとのこと。こういったデータの移行がスムーズにできれば、いわゆる入力ミスはより削減でき、効率化がより進むでしょう。
ケアマネジャーもアカウントを持ち、ヘルパーの活動報告やスケジュールを逐一把握できないかと考えています。本来、ケアマネジャーとヘルパーは資格も役割も実際の仕事も異なりますが、利用者に関わる情報を逐一共有できるのは重要なことです。入力する必要があるメンバーだけでなく、関わるメンバーも含めて情報を共有して活かす対応が求められています。
今後、『Medicare』の活用がより浸透すれば、組織として業務用スマートフォンを用意して対応することも検討しているとのこと。機種やOSのバージョン、機能等を揃えることができれば、データ移管はもちろん、カスタマイズ、不具合が生じた場合の対処もスムーズにできるようになるでしょう。
幸会では次の4つの理念を謳っています。
・ 人としての「尊厳」を大切にすること
・ お互いの「プライバシー」を大切にすること
・ 個人としての「自立」を尊重すること
・ 「自己発達」のための機会を整えること
『Medicare』を導入する前は、とかく月末にバタバタすることの多かった業務ですが、効率化が実現し、この理念をあらためて見つめ直す余裕もできるようになったとのことです。利用者の思いにより深く寄り添いながら、理念にもとづいた業務ができるようになったと言えるでしょう。
※この記事は、2020年12月時点の情報を元に作成しています
Company Data
設立 | 1994年12月 |
本社所在地 | 神奈川県相模原市南区相模大野9丁目12番22号 |
職員数 | 14事業所で約300名 |
営業所 | 特別養護老人ホーム幸園、ヘルパーステーション幸園 など |
事業内容 | 介護老人福祉施設、短期入所生活介護・介護予防短期入所生活介護、通所介護・介護予防通所介護、 認知症対応型共同生活介護、訪問介護・介護予防訪問介護、居宅介護支援センター、地域包括支援センター、保育園など |
Webサイト | https://www.saiwai-kai.com/ |
※2021年10月時点
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