Introduction Data

導入年月2017年11月
利用ユーザ数230名
導入形態クラウド
導入目的既存の介護ソフトとのスケジュール連携
訪問介護のスケジュール調整
訪問介護現場での介護記録の入力、検印
既存の介護ソフトとの実績データの連携

訪問介護サービスにおける膨大な事務量の軽減、ミスの削減

働き方改革の推進

企業リスク回避とサービスの質の向上

利用者の生活リズムを取り戻す「短時間巡回訪問介護サービス」を提供

 岐阜県内に7つの営業所を持ち、訪問介護等の居宅介護サービスなどを提供している(株)新生メディカルは、1977年に創業し、国の介護保険制度が始まる前から個人契約や市町村の委託を受け、在宅介護サービスを提供してきたパイオニア企業だ。

 訪問介護サービス利用者の「自立と尊厳」を重んじ、日中の生活をしっかり支え、1日の生活リズムを取り戻すことを目的とする「短時間巡回訪問介護サービス・岐阜県方式」を提唱し、サービスを提供している。

 在宅で、尊厳ある生活を確保するために必要な最低限の「生活の質」を保証するための「ものさし」として「ケアミニマム(離床・移動、食事、排泄、保清、更衣、睡眠)」を設定。それに基づき、利用者本人の生活の土台となる生理的欲求を満たせているかどうかをアセスメントしたうえで、1日に複数回もしくは毎日の定期巡回で、生活と体調の安定を図るほか、利用者本人や家族に「またすぐ来てくれる」という安心感を提供することがモットー。頻繁な訪問により、状態の変化に対して早期発見・早期対応を可能にし、利用者がターミナル期でも在宅で暮らせる環境作りをサポートしている。

訪問介護サービスにおける事務量を減らし、ミスをなくしたい

 ところが、1日に複数回もしくは毎日定期巡回を行うことで、訪問介護の回数は飛躍的に増加する。1つの営業所だけでも毎月約2000回、同社全体では毎月約1万7000回の訪問介護を実施しており、1人のヘルパーが1日10回以上、利用者宅を訪問することも少なくないという。

 同社では、これまで介護記録の記入や情報共有を紙ベースで行ってきた。ヘルパーは利用者宅でケアを行ったあと、介護記録用紙に手書きで記入。それを営業所に持ち帰り、記載内容をチェックしたあと必要事項を介護保険請求ソフトに打ち直して介護保険請求を行っていた。それらの作業には非常に手間がかかり、手作業で行うがゆえのミスも生じるため、いかに事務量を減らし正確性を向上させるかが課題になっていた。

 またシフト管理についても、ヘルパーがシフト表通りに、利用者宅を訪問したかどうか、報告がないと確認ができないという問題があった。ヘルパーが訪問時間を間違えたり訪問を忘れるといったケアレスミスだけでなく、管理者側の手配ミスも起こりうる。

 さらに情報共有の面でも課題があった。現場でのケアを終えたヘルパーは、次に利用者宅を訪問するヘルパーにケア内容や利用者の状態を申し送る。

 「できるだけ早く次のヘルパーに情報を送りたいと思っても、皆がいつも動いているので、ある程度時間が経ってからやっと報告が来るという状況でした。しかも、その手段がアナログだったため、申し送りは電話かメールで、間に人が入らなければ情報の伝達や共有ができなかったのです」と、新生メディカル大垣営業所のサービス提供責任者・五十川綾子氏は話す。

訪問介護のICT化の実証実験で『Medicare』に好印象

左から、新生メディカル大垣営業所のサービス責任者の佐竹昌代氏
サービス提供責任者の五十川綾子氏
サービス提供責任者の大須美佐子氏

 こうした中、同社は、岐阜県が実施した訪問介護事業におけるICT活用の実証実験に手を挙げた。同県が進める、訪問介護事業を支援する革新的なシステムの開発事業に、同社がユーザーとして参画したのだ。

 そこで用いられたのが、インフォファームが開発・販売している訪問介護・看護事業所向けパッケージ『Medicare(メディケア)』だった。

 『Medicare』は既存の介護ソフトとの連携が可能で、訪問介護・看護事業所が現在使用している介護ソフトで作成した予定データを取り込み、予定の調整を行うことが可能。また、へルパーがスマートフォンを用いて最新の予定を確認したり、訪問先で介護記録を記入できるほか、サービス提供責任者がヘルパーのシフトやサービス提供状況をリアルタイムで管理可能。さらに、『Medicare』に登録した訪問介護の記録データを実績データとして既存の介護報酬請求ソフトに送り、介護報酬請求を行うことができる。

 訪問介護の現場にITを導入することで、事務量の軽減や業務上のミスの削減を図り、介護サービスの質の向上を支援することを目指した革新的なシステムだ。

 同社も、「これから介護人材が不足していくと見られるなかで、今後どうやって業務の効率化を図っていくかが会社としての大きな課題。事務作業をできるだけ減らしながら、その一方で、日々の業務を確実にこなしていくにはICT化が欠かせません。会社としてICT化を進め、ICTシステムに適応していきたい」(大垣営業所・大鹿みどり所長)という問題意識を持って実証実験に参加した。

 同社は大垣営業所に『Medicare』をトライアル導入し、2016年10月から約半年にわたり、インフォファームとともに実証実験を実施。約20人のヘルパーがユーザーとなり、スマートフォンにアプリをインストールして、『Medicare』を日々の業務に使い始めた。

 「従来の紙ベースでの業務と『Medicare』を活用した業務を同時に行いましたが、1、2カ月が経った頃、ヘルパーから『Medicare』は情報が早いという声が上がってくるようになりました」と五十川氏は言う。

 「今までは、ヘルパー同士が申し送りをする場合でも、自分から連絡するなり、『何かありますか』と聞くまでの間にタイムラグがありました。でも『Medicare』の場合は、前に入ったヘルパーがすでに介護記録を残してくれています。自分が利用者宅を訪問する前にスマートフォンを開き、いつでも介護記録の確認ができるので、ヘルパーたちは安心して訪問することができるようになりました」とも語る。

 訪問介護サービスの利用者情報の共有が、迅速かつ確実に行えるようになったことに、同社は好印象を抱いたようだ。

セキュリティを確保し、手軽に認証・ログインできるカメレオンコード

 とはいえヘルパーの中には、『Medicare』にログインする際、IDやパスワードをスマートフォンに入力することに苦手意識を持つ人が多い。スマートフォン自体に触ったことがないという職員も少なからずいるという。

 先にも記した通り、多いケースで1人のヘルパーが1日10数回の「巡回訪問介護」を行う中で、利用者宅で介護記録の入力に時間をかける余裕はとてもない。ましてや、スマートフォンで『Medicare』アプリを立ち上げ、入力画面にたどりつくまでに時間がかかることは大きなストレスになる。利用者の個人情報を保護するためのセキュリティは確保しつつも、スムーズにログインができなければ、システムは定着しないというのが訪問介護の現場の実情だ。

 そこで『Medicare』では、インフォファームが独自に開発した次世代バーコードである『カメレオンコード』を採用。QRコードによる認証・ログインのようにスマートフォンのカメラで接写する必要がなく、離れた場所から『カメレオンコード』をサッとかざすだけで、スマートフォンに不慣れなヘルパーでも『Medicare』に簡単に認証・ログインできるのが特徴だ。

 また『カメレオンコード』はヘルパーだけでなく、訪問介護サービスの利用者にも発行されており、利用者宅を訪れたヘルパーが自分のスマートフォンのカメラに利用者宅の『カメレオンコード』をかざすと、いま自分が予定通りの利用者宅を訪問しているかが確認可能。訪問先に間違いがなければ、その利用者の1日のサービス予定を記した「今日のサービス提供一覧」画面が表示される。

 「じつは一番使い勝手が良かったのが『カメレオンコード』でした。従来のQRコードだと、IDやパスワードの入力画面を通り越すことができませんが、『Medicare』ではスマートフォンのカメラに『カメレオンコード』をかざせば、最短ルートで必要な画面に飛ぶことができるので大変便利です」と大鹿所長は語る。

現場ニーズに応える柔軟なカスタマイズ

 こうした現場の好印象を背景に、新生メディカルでは、実証実験が終了したあと『Medicare』を同社の業務に本格的に導入するかどうかの検討を行った。先に述べた通り、同社で使用している既存の介護ソフトや介護報酬請求ソフトとの連携が可能だったことが決め手となり、2017年春に導入を決定。

 その後、インフォファームでは約3カ月をかけて、ヘルパーなどにヒヤリングを行い、さらに要望に合わせたカスタマイズと改良を行った。

 たとえば、外部利用することで情報の漏えいも考えられるため、セキュリティの面から、介護現場で『Medicare』から閲覧・登録できる利用者情報を絞り込んだ。また、介護現場での介護記録の作成作業のしやすさにもこだわり、面倒な文字入力なしに、スマートフォンの画面のタッチ操作を中心に、必要な事項を登録できるようにした。スマートフォンの操作に慣れないヘルパーでも、画面をパッと見て直感的に操作でき、誤操作をしにくい配慮もなされている。

 「いくら便利なツールでも、使う人たちが本当に使いやすいと思わなければ長続きしません」と大鹿所長。五十川氏も「(『Medicare』は)パッケージで『こんなものです』と言われたら、たぶん私たちには使えない機能も多かったでしょうし、ヘルパーたちも操作にストレスを感じていたかもしれません。その点、インフォファームさんには、私たちの仕事の中で本当に必要な機能は何かということを、ぎりぎりまで考えていただき、『Medicare』を当社バージョンに仕上げて下さいました」と、柔軟な対応を高く評価する。

 新生メディカルでは大垣営業所と岐阜営業所を皮切りに、2017年11月から『Medicare』の各営業所への導入を進め、2018年3月に同社の7営業所すべてで『Medicare』が稼働するに至った。

「操作に失敗したらどうしよう」という不安を解消し、


毎日使うことが楽しくなる工夫

 同社が『Medicare』の本格導入を進めるにあたり、インフォファームはヘルパー向け説明会やサービス提供責任者などの管理者向け説明会を実施した。

 その際、全社一斉に説明会を行うのではなく、各営業所のチームをベースに少人数で実施し、実際にスマートフォンに触ってもらいながら、操作のポイントを伝えていくことを重視したという。

 全社に先駆けて『Medicare』を導入した岐阜営業所と大垣営業所では、インフォファームが説明会を実施したが、それ以降は、すでに『Medicare』を導入し運用を始めた営業所の職員が講師を務め、自社で説明会を開催した。実際に介護現場で『Medicare』を使い始め、ヘルパーたちがどこでつまづくか、どんなトラブルが起こり得るかを熟知している職員が講師を務めるので、「実際に使用する人たちの温度」に合わせた説明が可能になり、導入をスムーズに進めることができたという。

 「正直な話、『スマートフォンを使うのが初めて』とか『こんな時代になったらもうヘルパーを続けられない』と不安に思っていた職員もいました。でも、事前にカスタマイズを通じて、ログインしやすくしていただいていたので、説明会でスマートフォンを手に取り、実際に『Medicare』を使ってみるという体験をしてみたところ、『わりとできた』という人が多かったですね」と大鹿所長。

 また、五十川氏は「『Medicare』では文章ではなく、アイコンや色の変化などのように視覚的に訴える表示が多く、小さなスマートフォンの画面の中でも、自分が入力や操作を行った事柄が、形として見えてくるところが面白いですね」と語り、操作の不安を、操作する楽しさに変える工夫がところどころに凝らされている点を評価する。

 たとえば『Medicare』の予定表画面を開くと、これから訪問する予定にはカバンのアイコンが表示されており、ヘルパーが利用者宅を訪問し、ケアを終えて介護記録を登録すると、アイコンがノートに変わる。また、ヘルパーが利用者宅を訪問し、カメレオンコードをかざすと予定表画面の該当箇所の背景色が変わるというように、色の変化を通じて、サービス提供責任者は訪問介護サービスの提供状況をクラウドでリアルタイムに把握できる。

「業務の効率化と情報共有を強化し「働き方改革」を目指す

 新生メディカルの訪問介護事業における業務のICT化はまだ始まったばかりで、紙ベースでの作業も一部並行している。まずは『Medicare』に慣れながら、徐々にペーパーレスに移行し、『Medicare』で扱う利用者情報の内容も拡充させ、情報共有を強化していく考えだ。

 サービス提供責任者の立場からしても、「今までは電話やメール、あるいは介護記録の用紙が届かなければわからなかったことが、『Medicare』を見ればすぐにわかるようになり、非常に便利です」と五十川氏は感想を述べる。

 『Medicare』を活用しつつ、新生メディカルが目指すのは「働き方改革」だ。今後、日本ではさらに高齢者が増え、ヘルパーの需要が増す一方、介護人材の不足が深刻化することが予測されている。同社はそうした中でも、業務の効率化等を通じて休みが確保できる体制を築き、ヘルパーの働き方を守っていかなければならないと考える。

 「仕事のオンとオフを明確にすることで、『介護の仕事をやってみたい』と思う人が増えるような会社なり職場を作り、仲間を増やしていきたい」(大鹿所長)というビジョンを同社は抱いている。

 新生メディカルが目指す「働き方改革」を実現するうえで、利用者宅に自分1人で行かなければならないという、訪問介護の現場で働くヘルパーにとって最大の不安をいかに軽減するかが大きなポイントになるだろう。

 その意味で、自分の前に利用者宅を訪れたヘルパーからの申し送り事項を始め、必要な情報が瞬時に自分のスマートフォンに届き、利用者の状況がわかるということが、各ヘルパーの安心感を大きく高めることは言うまでもない。

 逆に、そういう体制が構築できれば、新生メディカルのヘルパーたちは、利用者に対して、より質の高い訪問介護サービスを提供できるようになるということにもなる。

 「使いやすいシステムを、インフォファームさんと一緒に創り上げているというイメージですね」と、大鹿所長と五十川氏は声を揃える。

 訪問介護の現場で、ヘルパーが100%の力と真心で利用者に向き合うことを支援するため、システムを利用することに対する不安を取り除くことが、『Medicare』の大きなコンセプト。新生メディカルが手がける訪問介護の現場では『Medicare』が浸透し、日々の業務の中で当たり前の存在になりつつある。

  Company Data

設立1977年8月
本社所在地岐阜市橋本町2丁目52番地 岐阜シティタワー43 2F
資本金3,500万円
事業内容訪問介護、居宅介護支援、認知症対応型通所介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、小規模保育
Webサイトhttp://www.shinsei-md.jp/

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